トップアートディレクターの頭の中のお話(「アイデアが生まれる、一歩手前のだいじな話」森本 千絵)
いつからかわからないくらい前から、森本千絵さんのことは気になる存在。一応同じ業界のアートディレクターである佐藤可士和さんは何度もこのブログに登場しているけど、森本さんは初の登場になります。面白くて、共感させられる本だった。一気に読み切った。超オススメな本。
「本気」と「本物」の追求
僕は、森本さんのことを誤解していたようだ。メディアに出ている彼女は、いつもにこにこしてて、アーティステックな雰囲気。自分が創りたいモノを創りたい時に創っているのかな、センスで勝負しているんだろうな、とか思ったり。勿論、勝負の厳しいこの業界で目立つ存在になるには、相当の努力をしているのだろうが。
と、そんな見立ては随分と裏切られた内容になりました。相当どころか、スーパー頑張っているではないですか。大学時代とか博報堂時代の話とか刺激的でした。そんな彼女の仕事に対する考え方の中で、特に、印象的だったポイントを抜粋。
すべては、ただの出会いではなく、ひとつひとつ奇跡的なこと
これは、特に共感させられた。最近とても思っていること。これまでもいまも、すべての出会いであり、その出会いから起きた出来事、物語は、奇跡でしかない。そのように人生を構成する一つ一つを捉えたとき、「今」置かれている環境や人への向き合い方は特別なものになる。
私はみてないものを信じることが人の心を動かすと思っています。
目から鱗。すごいステートメントに出会ったと思った。少し前に、ISLの野田さんによるリーダーシップの話を書いたのに近いのだけど、もっと広い意味だと思う。人は見えるもので、心って動かないのかもしれない。行動、身体は動くのかもしれないけどね。
本物には出会おうと思わなければ出会えないし、出会わないといま目の前にあるもので満足してしまうのです。だから、本物への探究心を持ち、実際に出会い、敗北する経験を多数重ねてこそ、本物が何かがわかり、本物をつくっていけるようになる。その体験すべてが基礎力になっていく。(中略)子どものときからずっと好きな者は、「本気」であり、「本物」でした。(中略)本物というのは「圧倒的なもの」
最近、なんかまったりしている。小さくまとまっている気もうっすらしている。昔はやばいビジネスパーソンに道場破りをしまくっていたのにね。僕自身がそこそこ成長してきたのかもしれないけど、だからこそ、「本物」に出くわす機会を増やさないといけない、と思った。森本さんのようなトップランナーが、「本物」と対峙して、経験値をあげていっているのだから。
森本千絵さんのアイデアの出し方
あと、特出しして、書いておきたいのが、アイデアの出し方について。サントリーのボスシルキーブラックのオーケストラ、Mr. Childrenの防波堤のポスターや水滴の新聞広告、東北地震の際のPray for Japanのポスター・・・。彼女の作品は、一目見たら惹き付けられ、脳に焼き付き記憶に残る。どのように、アイデアを出しているのか?
- 日常にはおもしろいことが沢山転がっている
- アイデアは誰でも出すことができます。日々、見ているもの、聞いているものがある限り、アイデアは絶対に出てきます。(中略)みんな、おもしろくてすごいアイデアを出そうとしているから、アイデアが出ないと思っているだけなのです
- 私は、自分のアイデアはとにかく人に話しまくります。その中にはみんなが困ってしまうような、つまらないものもあります。しかし、相手の表情を見て思いついたことを話し手、またその反応を見てサイド確認したりする。おもしろいから発言するのではなく、とにかく外に出してみるのです
- アイデアはどこにでもあるのです。(中略)しかし、入れるためには空っぽにしておかないといけません。そのためにも、アイデアが生まれたらどんどん出す
自分のアイディエーションとを比較したとき、
っていうのが大きな差分かな、と思った。
一つ目の人に話す、っていうのは、ミーティングで話していることを話して、ちょっとした指摘を受けたら、そうそう、で、●●で、▲▲なの、と自分が無意識的に考えていたことを口に出して、アイデアが膨らんでいく、っていう経験を思い出すのだけど、そこまで自覚的に取組んでいなかったな、と思った。
二つ目は、アイデアを出し切ることで、逆に良いインプットが入ってくるかな、とか思っていたけど、「空っぽ」にするって感覚がいいな、と思った。今のG/Wは、あまり能動的に情報を取りにいくのをやめて、受動的な情報の捉え方を意識しようとか思っていたのだけど、「空っぽ」感がキーだな、と。
これら二点は、もっともっと意識的にやって、アイデアを出す、ことにこだわろうと思いました。量も質もね。そもそも、アイデアを出すという行動てワクワクして、脳が躍動するものだしね。その感覚を促進しようと思いました。