配車サービスの黒船?! (Uber)
facebookを見ていると、ちょこちょこ話題に上がっているのが、ハイヤーのオンデマンド配車サービスのUber。ITリテラシーが高いイノベーター層が、ソフトローンチした本サービスを早速使ってみている模様。配車サービスの黒船、等のタイトル記事があったりするのだが、そもそも、どのようなサービスなのか?
配車サービスに、モバイルテクノロジーをアドオンしたサービス
ハイヤーのオンデマンド配車サービス、と紹介されているのだが、既にあったハイヤーに、ITのモバイルアプリケーションを追加することで、利便性を高めたサービス、のようだ。具体的なサービス概要はこんな感じ。
- まず、iPhoneでアプリをダウンロード
- 個人情報を登録。オンデマンドなので位置情報は当然。決済はPayPalで、クレジット情報もインプット
- アプリを開くと、地図に自分と、稼働しているUberの車のロケーションがわかる
- 利用する際には、乗車場所と目的場所をインプットすると、概算の到着時間と利用料金が出てくる
- 乗車位置で待っていると、付近まで車が来ると、SMSでメッセージがくる
- 到着後は、ハイヤー(クラウン等)ゆえ、運転手が開けてくれる
- 乗ると、社内空間はゆったりしているし、iPadもあったりする
- 決済は先の通りで、決済時間はショートカットし、後にメールで領収書が来る
- 運転手に対する評価も出来て、利用時の判断材料に活用される
気になる価格については、こちら。
- 基本料金:100円
- 1km毎:300円
- 1分毎:65円
この価格モデルだと、一見高いのか安いのかわからない。だから、目的地までの概算の利用料金が幅付きで予約前に出るのだけど、それでも、高いのか安いのかわからない。ので、類似サービスである日本交通の「全国配車サービス」のアプリで、同じ距離で出した利用料金と比較すると、こんな感じ。
- Uber:1,900-2,600円
- 日本交通:1,520-1,790円
ということで、25-45%程高い価格帯なのかな、といった感じです。
送迎のマッチングプラットフォームシステムの運営による手数料ビジネス
ビジネスモデルとしては、こちらが概要(複数のソースより)。
- ハイヤー事業者からは、Uberは登録利用料をもらう
- Uberのシステムにより、カスタマとハイヤー事業者とをマッチング
- 送迎が完了したら、カスタマーはUberを通じて、乗車利用料金を支払い、ハイヤー事業者に。内、10%を手数料料金として、Uberがもらう
送迎ビジネス領域における、マッチングプラットフォームビジネスということですね。
以上の情報を基に、少し考察をしてみると。
- 送迎ビジネスにおけるハイヤー等の重たい資産であり、人件費を持つことなく、マッチングプラットフォームシステム部分だけを担うことで、Uberとしてはリスクをおさえたビジネス
- 送迎ビジネス運営会社は、稼働率向上が収益を左右するキーファクターであり、常に課題。このプラットフォームを通じて、稼働率を高めることができるならば、仮に、10%の手数料を支払っても良いだろう
- 今は数台がフルタイムでFSをやっているが、今後は、他のハイヤー事業者が稼働していない時間帯に登録して、稼働率を高めるような使い方をしていくかな
- カスタマー目線で、誰がこのサービスを使うのか?を考えてみると、個人的には限定的かな、と。現時点では、クラウンやレクサス等の車種で、あくまでハイヤー、の位置付けだが、ハイヤーを利用する人がどれほどいるのか。そもそもハイヤーでのオンデマンド性は低くて、定期契約がされているケースが多くて、思い立って、利用するケースは少なそう
- 価格は先の通り、通常のタクシーの送迎と比べて高いので、六本木でソフトローンチしているように、小金持ちのインテリッチが、ピンポイントで誰かをもてなすとき(ハイヤーは常駐させてないが、顧客と外出するとき、や、彼女にカッコ良いところを見せるとき、など)くらいかな、と
- 今は、ハイヤーによる高めの層だけをターゲットにしているのだけど、配車プラットフォームシステムは別にハイヤーに限る必要はないので、流通金額が限定的であろうハイヤーから、通常のタクシーにもカバレッジを拡げる可能性もあるかな、と。現状、日本では、Uberは、結構ハイエンドなサービスというポジションを作ろうとしているので、いつ、どこまでやるか、は不透明感があるが
Uberの起源は、Peer to Peerモデル?!
で、とある記事によると、元々なのか地域的なのか、日本で展開しているサービスとは異なる、Peer to Peerモデルがあったか、ある模様。
- どこかに行こうとしているがタクシーがなかなかつかまらない時に、スマートフォンのアプリのボタンをポチっと押す
- すると、近くを通っていて方向が同じクルマから「5ドルで乗せてあげる」「4ドルでいいよ」とメッセージが入る。「この人(クルマ)でOK」とすると、その車が来る
これは、オンデマンドではなくて、Peer to Peerのサービス。カスタマーと事業者ではなくて、カスタマー(乗る人)とカスタマー(乗せる人)の間にプラットフォームシステム事業者として介在して、両者をマッチングさせるわけですね。創業者のTravis Kalanickは、Peer to Peerのシステムでベンチャーをやっていたことがあるようなので、納得。推察するに、元々Peer to Peerモデルでやったが、規模に限界があるので、事業者を巻き込むモデルに展開していったのでは。
このモデルと似た様なモデルで言えば、ヤフーオークションみたいなサービス。車の座席という在庫について、個人の車の座席にフォーカスして在庫と捉えて、在庫の時間的な偏在をなくして、利便性を高めたサービスになる。これって、人の配送効率を高めるサービスなので、地球の環境を考えてみても望ましいよね。その観点では、コンビニの複数メーカー配送(異なるパンメーカーも牛乳メーカーが同じトラックで配送するモデル)も実は似てたりする。
ちょっと脱線すると、Airbnbという似た様なサービスもあって、これは、個人の家の部屋が空いている場合、その部屋をPeer to Peerで貸し出すサービス。商材が車から部屋に変わったバージョンですな。
どちらのサービスも、セキュリティ面や心情面的にかなり課題があるのですが、Airbnbでは、東京でも利用されていて、累計で1億宿泊を超えているらしいですね。Ainbnbも、恐らく手数料モデルでしょうから、10%だとしても、結構な金額になりますね。
これらのPeer to Peerのビジネスモデルって、少し前は、Share、て言葉で片付けられていたのですが、時間をスライスさせた観点でみて、在庫という概念でシステム管理して、需要者・提供者側の双方がハッピーになるモデル(課題は沢山あるのですが)という意味で、面白いですよね。
Uberは、日本で成功するか?
と、ちょっと脱線しましたが、今のままでは、Uberは厳しいでしょうね。
- ハイヤー領域だけだと市場が少ない
- タクシー領域にもカバレッジを拡げると、タクシー事業者との競争が厳しい
ひょっとしたら、経済環境が上向いてきているので、たまの金曜日には、Uberを利用してデートする、みたいなブームが起きるかもしれませんが、一時的なお話かな、と。
他方で、タクシー領域では、先に紹介した通り、「全国配車サービス」があって、価格勝負になる。勝てる価格帯を実現できるようなサービスに変えていくことも想定されます。「全国配車サービス」は、日本交通と日本マイクロソフトが作っているので、他のタクシー運営事業者を巻き込んだ共通サービスにすると良いのかもしれません。Uberも海外では実際に取組んでいる模様。
でも、少し調べてみたら、「全国配車サービス」は日本交通だけのサービスではないで、提携タクシー会社がどんどん増えているようです。配車サービスのインフラにしようとしているように受け取れます。シンガポールのタクシー配車システムのようなイメージでしょうか。シンガポールのタクシーは、僕がいた時は、スマホではなく、電話でしたが、それでも相当便利でした。こういったインフラサービスを志向していると、違う極をつくって闘うといったことをガチでやると体力勝負になって、更に難しいわけですね。
ということで、Uberは、日本では厳しいのかな、と現時点では考えております。