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たけしの華麗なる消費生活

華麗なるたけしが、日々の生活の中で、華麗に消費していったモノやコトやシコウについてのメモ。JPとUSのVisionary Company、Management Consulting Firm、MarketingやBusiness Development、Business Strategyな経験からか、そもそもだからなのか、かなり自由な風味で書き綴っております^^

nendo design = 最強の右脳と左脳による非常識なMethodology × 超プロフェッショナルなAttitude (「ウラからのぞけばオモテが見える」佐藤オオキ nendo)

正直、読む前の本への期待値を大幅に越える内容でした。デザイン事務所nendo代表の佐藤オオキ氏とnendo自体の思考と行動に迫った内容なのですが、世間に流布する常識からはかなり異なる方法論 | Methodologyと、その背景にある右脳と左脳間でアウフヘーベンが起きまくっている思考 | Think、そして、根底にあるプロフェッショナルな姿勢 | Attitudeは、元々想定していた新進気鋭のデザイン事務所から想像する華やかなイメージからは、かけ離れた内容になっていて、驚きました。

 

佐藤オオキ氏は、早稲田大学理工学部建築学科を首席で、そして大学院も卒業。私も早稲田の理工で年次がかぶっているので、大久保キャンパスで4年間一緒だったようです。そういえば、かなり背が高い人が建築学科の方にいたような。というような記憶はさすがにないわけですが。あのキャンパスを一緒に過ごした人たちの中から、このような活動とパフォーマンスをしていることは、嬉しい限り。

 

 

佐藤"オオキ"と佐藤"可士和"

さて、みなさんは、デザイン事務所に、どんなイメージがあるでしょうか?少し特殊な日常を過ごす中で、キラリと光るアイデアが生まれ、そのアイデアを美大出身の人が、得意とするアプローチで、形にして、世に出て、みなが目にする。そんなイメージがあったりするように思います。

 

最近注目を集めているのが、佐藤可士和氏。彼はそんなイメージとは対極のアプローチをしている。クライアントであるトップとの対話を通じて、トップや企業、そして、商品・サービスの課題に迫り、その企業や商品・サービスの時系列的な実績や行動を分析し、コンセプトを固め、コミュニケーションにおけるグラフィックデザインに落とし込まれていく。そのアプローチは、コンサルティングファームにも通じる、論理的で本質的なアプローチ。普通の美大出身の人にはできないでしょう。小さい頃から長い間、整理、というキーワードに基づいて自分の行動であり思考をしてきた佐藤可士和氏だからできること。普通のデザイナーにはできません。

 

では、佐藤オオキ氏のデザインとは、どのようなものなのか?本質的には、佐藤可士和氏に近いと思います。企業や商品・サービスに対して、論理的で分析的、そして多面的に本質に迫ります。具体的には、全ての店舗で、その会社の一つのメッセージを作ろうとするアプローチや、商品ラインアップを全体で統一性を持たせてブランディングを高めるアプローチ、等。そうすることで、企業側からのメッセージ性を強くしているのと同時に、競合との差別化であり模倣のリスクをミニマイズすることも考え尽くした上でのアウトプットになっているので、なかなかのものです。

 

 

非常識なアイデア創出・実現の方法論

しかし、具体的なデザインをしていく段階で、とてもユニークな点を感じさせられました。大きく二つ。

  • イデアを出すために目的意識は持たない
    • 何かの情報が欲しい、という目的意識を持つことで、関連する情報が目に入りやすくなる。所謂カラーバス効果。本を読む時も、街を歩く時もどんな時も、常に目的意識を持たないといけない、と普通考えがちです
    • しかし、佐藤オオキ氏は、アイデアを出すために何か特別のことはせず、常に脳を空にすることを意識して、日々のルーティンの中から、違和感に気づくことを大切にしている。頑張って目的意識を持つことで、その目的以外の面白いアイデアには気づかずに、アイデアは逃げていってしまう。だから、目的意識を持って焦点を絞って毎日を過ごすのではなく、広い世界を見える様にする
  • 100点をいきなり取ろうとしない
    • 「70点」のアイデアを沢山見つける
      • 100点のアイデアを見つけようとすると、ホームランか三振になってしまう。失敗しないことがプロとしての最低ラインである中、100点を取ろうとすることは、リスキー
      • イデアを出す天才ではないことを自分でもわかっているので、エグゼキューション能力を高めている。最終成果物はアイデアだけではできなくて、エグゼキューションがあって、両者の掛け算。アイデアが100でも、エグゼキューションが50の場合、結果は50点になる。しかし、アイデア70、エグゼキューション100だと、結果は70点になる。クライアントがどちらに満足するかは、明白
      • そして、アイデアのパフォーマンスはばらつきが出やすい(100のときもあれば50のときも)が、エグゼキューションのそれは安定的(100をキープしやすい)
    • クライアントの期待値を超えるプレゼン資料を「三倍速」でまとめる
      • 時間をかければ良いモノができるという法則はない
      • 通常の三倍速でアイデアを形にすれば、同じスケジュールで三倍速でアイデアを形にすれば、同じスケジュールで三倍の量を提案できるし、そうでなくても、1/3の時間を提案にかけて、残り2/3の時間を軌道修正にあてて、完成度をあげることができる

 

目的意識は持たない。そうすることで、幅広い気づきを得る

上記一つ目の目的意識を持たない話は、とても印象的でした。結局、他の誰でもない自分が何か新しいことを生み出すことを考えた場合、何かのテーマがあったとしても、そのテーマに対する解を出す段階で、色々な要素を盛り込むことになる、つまり、創造とは、何かと何かを組み合わせることで新しいモノができることだと思いますが、実は、その片方の要素というのは、このような気づきから、生まれるのだろうなと思わされたからです。

 

実は、私も、一時期、日常生活の文脈の中での「気づき」については、はまったことがあります。とある、会社でのプレゼンでもそんなスピーチをしたことがあるのですが。しかし、その「気づき」にはまるだけではなくて、その「気づき」を何かの創造の一要素に確実につなげていく、ということはできていなかったな、と読んでいて思いました。

 

また、アイデアで100点をとらないことを心がけている点にも、驚きを感じます。佐藤オオキ氏であり、nendoは、世界的なデザインの賞を幾つもとってきているからです。100点をとろうとしていないのに、100点、つまり、世界的なデザインの賞をとれているってこと?!というわけです。

 

しかし、この算数は正しくないですね。佐藤オオキ氏の100点が、世界的な水準での100点とはイコールではないということです。これは、佐藤オオキ氏たちの考える100点がとても高いということもあるとは思いますが、先程のアイデアとエグゼキューションの掛け算の結果が、評価対象となる最終成果物の点数になる、ことに通じると思います。

 

この世に出ているモノやコトというのは、沢山の人が妥協せずに創りあげているわけですが、その過程で、なんらかの理由により、品質が下落していく要素は多分にあるということだと思います。そう考えてみると、アイデア70、エグゼキューション100の時間の掛け方や、ケーパビリティの開発の仕方、についても、磨く余地があるのかな、とも思いました。

 

 

圧倒的なスピードで、成功を引き寄せる

スピードの話は、コンサル業界でよく使われる、quick and dirtyとほぼ同じ。本中には、試作品を高速で作る話があるのだけど、この点は、世界的なデザインファームである、IDEOのプロトタイプの考え方にも近い。

 

特徴的なのは、試作品を超スピードで作っている点。企業側からオリエンテーションがあった3-4日後には、試作品ができている、というスピード感。オリエンが終わったら直ぐに、オリエン中にできた佐藤オオキ氏のアイデアから、試作品制作に取りかかるというムダのなさ。全体のアイディエーションもディレクションもこなす佐藤オオキ氏が海外にいたとしても、FEDEXで試作品を滞在ホテル先に送りつけ、判断と改善を推進していく超スピード。

 

ここで実現している超スピードの背景には、クライアントとの信頼構築・期待値コントロール、デザインプロセスや物理的なオペレーションプロセスの磨き込み、根底となる品質に対するコミットメント、実力重視の人材登用・活用、等様々な要素が混在した結果になります。

 

デザインだけでなく、デザイン事務所であり、高付加価値ビジネスの運営という意味でも、非常に示唆に富んだ内容だと思います。

 

 

厳しいプロフェッショナルな姿勢

そのようなアプローチの方法論について、とても興味深く読んでいたわけですが、やはり、方法論だけでは、世界レベルには到達しませんし、継続的なパフォーマンスを出して行く機会も掴むことができません。左脳と右脳が同居し、その両者が高次元で闘うことで、最高のパフォーマンスを出しているわけですが、その根底には、デザインや仕事に対する姿勢 | attitude があります。

  • 妥協は最大の不名誉。クライアントから指示されてからではなく、気づいたことを全力で行う。この「全力」が大事。自分たちが120%納得できていないとクライアントは100%満足させられない
  • あらゆるプロセスで手を抜かず、徹底してデザイン案を検討する。そのために、できるだけ精巧な試作品を常に高速で作る。そうすることで、より具体的で質の高い会話をクライアントとし、より良いデザインに繋げることができる
  • 他のデザイナーよりも優れた武器を持っているとは思わない。できることを生真面目にひたすら一生懸命やる。どこのデザイン事務所よりもデザインのことを考えている時間が長いだけ

 

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Coolで涼しい顔で、センスの良いデザインをどんどん出していく、イケてるデザイン事務所。その背景には、超最高の方法論と姿勢があるわけですね。とても、興味深くこの本を読みました。かなりレビューが長くなりましたが、具体的な方法論については、ここではあまり紹介していませんので、是非、一度、この本を読んで頂ければと思います。