たけしの華麗なる消費生活

消費したモノ・コトについて、書いています。

理論と実践のブリッジツールとしての経営書

秀逸なポジションを取った経営書「世界の経営学者はいま何を考えているのか」

2016年にハーバードビジネスレビューの読者が選ぶベスト経営者のNo1に選ばれていたということで、遅ればせながら、一気に読んでみました。

まず、読んでみて思うのは、冒頭部分にあるのですが、本としてのポジションの取り方が面白いということです。ハーバードビジネスレビューが学術書ではなく、実用向けの論文集ということで最先端の内容ではないよ、であるとか、ドラッカーの思想としては良いけど、定量的な論拠に基づく科学ではないよ、であるとか、ポーターはちょっと古いよ、みたいなことが書かれていて、読者にとって身近なコンテンツについて、最先端ではない、と言い切り、読者の自尊心をくすぐったところで、幾つかの経営学のテーマについて紹介しています。このような本の読者は、大概巷にある本を読み漁っているので、そんなことを言われると焦るわけです。狙い定めたイントロといったところでしょうか。

しかし、中身を読んでみると、そんなに斬新なテーマはなかったかな、と思います。一橋大学大学院の楠木さんは、理論と実践の行ったり来たりが大事と言っていますが、経営の先端で、理論と実践をいったりきたりしている人にとっては、経営の断片に関する思考を巡らすわけですが、それらのどこかに当てはまる内容なのかな、と思います。

それは、逆説的なのですが、経営学が科学であり、定量的な論拠に基づくものであり、ドラッカーを引き合いに出したにもかかわらず、本としては、科学的な根拠の紹介は薄くエッセイ的にして、読み手が読みやすいような仕立てにしたことにあるかもしれませんね。最先端なのだけど、そんなに最近のことではないのも関係あると思います。まあ、学問なので、毎月新しい理論やフレームワークが生まれるわけではない時間軸、ということも関係あるでしょうね。

ほとんどの組織に当てはめて考えられる理論。トランザクションメモリー

とはいえ、自分が日頃考えていることに関する理論として、整理する意味ではよかったテーマがありました。まさに、楠木さんが書いた通りのお話です。

トランザクションメモリー:組織の記憶力に重要なことは、組織全体が何を覚えているかではなく、組織の各メンバーが他メンバーの誰が何を知っているか、を知っておくことである。英語で言えば、Whatではなく、Who knows whatであるということ

組織運営として、いかに組織の能力を最大化するか、は大きな論点だと思います。これは、短期的にも中長期的にもある論点かな、と思います。とある1つの組織の仕組み設計であるとか、会社としての仕組み設計などに関連する部分です。前者は、ちょっとしたルールやエクセルでの整理で片付く話かもしれないし、後者は、システム構築や組織組織設計、ちょっとした風土(会社内部活などもそう)の醸成などが出口としてあるでしょう。

これらの仕組み設計の拠り所となる理論がトランザクションメモリーということです。あなたの、私の携わる会社組織の1つの仕組みには、そんな経営理論があったりするのは結構面白いと思います。そして、そうした経営理論として抽象化され、その経営理論があるがゆえに俯瞰的に自分の所属する組織をみてみることで、さらに具体的な打ち手として、色々と思いつくでしょう。それが、楠木さんの話なのですが、それが理論の活用の仕方なのだと思います。

経営学は、理論と実践のブリッジツール

そういう意味で、最後の方で、経営学は役に立つのか?と、異なる視点から経営学を見つめているのですが、個人的には役に立つ、と思っています。でも、世界の経営者がいま考えている経営学である必要はないかと思います。私たちが日々経営である仕事をする中で、実践の一方にある経営学、の方法論やフレームワーク、それらがあることで、僕たちの実践の整理や意味合いを考える上でのツールとして役立てれば、と。

最近、これも遅ればせながら、ミスミの三枝匡さんの「ザ・会社改造」を読みました。彼は戦略経営者として、フレームワークの重要性を説いているのですが、本に出てくるのは、プロダクトポートフォリオマトリクスやABC分析による原価管理のフレームワークです。これらは古典的なフレームワークであり、最先端では全くありません。しかし、これらのフレームワークのメリットもデメリットも理解しきった上で、実用的であるとして採用し、ミスミにカスタムされたフレームワークとして活用しきっているわけです。

理論と実践のいったりきたりなわけですが、どんな理論でも良いわけでなく、使い勝手の良い理論であれば良いのでは、と思うわけです。そういう意味では、最先端でなくても良いのですが、最先端でも良いわけですが、業界や業種が異なる広範なビジネスの中で、いかに有効なフレームワークを経営学の中から抽出できるか、が事業経営者のセンスなのかもしれないな、と思った次第です。

幼稚園ネットワークの"Pay Forward"

最近、体力的には持て余していないのだけど(朝5時くらいから子供が騒いでて睡眠少なくなってんすよ)、精神的には持て余しまくっていて、今日はちょっと面白いヤツからちょっと面白い話を聞いたので、取り急ぎ、全然関係ないけど、ブログを書いてみた。

幼稚園ネットワークの "Pay Forward"

さて、僕は結構メモを書く方ですが、メモを整理していたら、少し前のメモが出てきて、結構良い事が書かれていたので、そこから考えたことを文章にしてみました。

幼稚園のネットワークの話なのですが、所謂、Pay Forward、のことが書かれています。Pay Forward、は少し前に映画でありましたが、自分が誰かから良い行為を受けたら、自分も誰かに良い行為をする、という好循環の意味です。僕は、この考え方が好きです。

幼稚園ネットワークは、ここでは、小さな子供達が中心となって成立する、子供と親のネットワークを意味していますが、メモのPay Forward、は、誰かの親が誰かの親にした良い行為がどんどん広がっていく様を表しています。

具体的には、とある同級生の母親が、幼稚園に通う子供の妹の洋服やツールを、私の内にくれた話です。借りた、わけではなく、頂きました。さわやかに。小さな子供の洋服やツールは、数ヶ月から長くても1年くらいしか利用しないので、経済合理性は基本低いわけで、頂く、のは少なからず助かるわけです。

さて、そうこうするうちに、うちの子供が少し大きくなりました。すると、もう使わなくなるツールがあったりするのですが、うちは、他の同級生の数か月違いの妹さんに、そのツールをあげたわけです。さわやかに。

これが、幼稚園ネットワークのPay Forward、ってやつです。その先も、誰かの妹さんのツールになっている、かどうかはわかりませんが、少なくとも、二つの家庭にポジティブな影響を及ぼした。これって、少し奇跡的なことだったりするかも、とか勝手に思うのですよね。

その奇跡的な出来事を引き起こしたのは、とある同級生の母親のさわやかな優しさだったりします。Pay Forward、には起源があるわけですが、その起源となる人って、とても偉大だよな、とも思ったりします。

ちなみに、その母親は、もともと教師の方でした。キャリアの意思決定だけでなく、日々の行為の意思決定が、一つのステキな思想というか原理に基づいているのかもしれないな、と想像したとき、ちょっぴり感動したりもしました。

Pay forward実体験からの"giver"目線の振り返り

全然関係ないですが、少し前にメルカリの売れ筋カテゴリの記事を読んでいたら、トップ5の一つが、子供服だそうです。上記にも書いた通り、一定期間で利用できなくなり、でも捨てるわけでもない状態であるモノは、フリマの商材に適していますよね。

ネットのフリマの経済的なプラットフォームにおける最適な価値交換により、捨てられるどころか、誰かが喜ぶ、のって良いことですよね。メルカリの企業紹介ページなんて見たことないけど、そういった理念が書かれているのかもしれませんね。

それも否定しないのですけど、この幼稚園ネットワークで生まれるPay Fowardの好循環ていいよな、とか思うのですよね。そして、そういった、Pay Forwardの好循環って、昭和だか大正時代の日本のそこかしこの町にあったリアルな光景だったのではないか、とか勝手に想像します。

そして、次に考えるのは、その好循環の起源の難しさについて、になるわけですが、先に出させていただいたような母親はこの日本に何人いるのだろうか、と。そして、そのループを自覚的に引き起こせないだろうか。とも思ったりして、USでちょっと騒がれている狭域型SNSのNext Doorをチェックしたりするけど。仕組みとしての好循環の設計とか、好意の行為のインセンティブ設計とかって、先の自発的な好意の好循環を実体験してみると、なんだか寒い思考だな、とかとも思ったりします。

そんな思考が一巡した後、結局、僕はどれだけgiverになれて、ボランティアなのかビジネスなのかわからないけど、好循環を引き起こせるのか、起こせたのか、といった、今日一日の振り返りに戻ったりするわけです。

つらつらといろいろ書いてしまいましたが、ブログてそんなもんだよね。それにしても、メモ一枚でいろいろ考えてしまうものだ。

異動や転職したときに大事にしたい5つのコト

はじめに

異動や転職する人は、その職場に就くまで、ワクワクドキドキしている人が多いのではないでしょうか?新しい仕事とは、どのような仕事か?新しい何かに取組むことで見える新しい世界、と言うと大袈裟かもしれませんが、そのようなワクワクは少なからずあるでしょう。勿論、ワクワクだけではなく、今まで知らない何かに出くわすことに対して、本当にやっていけるのだろうか?というドキドキもあるのではないでしょうか。

一方、異動や転職する人を受け入れる組織の人達にとっても、ワクワクドキドキがあると思います。新しく来る人はどんな人だろうか?その人は、自分の組織にとけ込んでくれるだろうか?そして、活躍してくれるだろうか?転職してくる人には勿論だし、他の部署から異動してくる人に対しても、そのように考える人は多いのではないでしょうか。

異動や転職は、本人と受入れ側の両方で、ワクワクとドキドキが混在している出来事。

勿論、異動や転職する人も、異動や転職する人を受け入れる側の人も、ポジティブな方向にいくことを望んでいることでしょう。しかし、実際には、ポジティブな方向にいくこともあれば、ネガティブな方向にいくこともあるもの。では、どうすれば、ポジティブな方向にいくのだろうか?それをちゃんと考えてみて、明文化してみるのもいいかもしれない、と思い、異動や転職する人の目線で、筆をとったのが今回のエントリー。 

異動や転職したときに大事にしたい5つのコト

結論として、異動や転職したときに大事にしたい5つのコト、がこちら。

  1. 「期限」を決める:あなたは、「いつ」一人前になるのか?
  2. 「全体構造」をおさえる:新しい何かをするときの「道標」を持っているか?
  3. 「準備する」、そして「質問する」:いかに、「沢山の修羅場」を呼び込むか?
  4. 「毎日」自省し、改善する:あなたのPDCAの「頻度」は、どの程度か?
  5. 「期待」に応え、超え続ける:その部署の誰かの期待に敏感になり、その期待を超えるためにコミットできているか?

一つ一つ書いていきたいと思います。

 

1. 「期限」を決める:あなたは、「いつ」一人前になるのか?

たけしさん、うちでは、一ヶ月経ったら、一人前だから

とあるITサービスのベンチャー企業に入社した直後に、直属の上司である執行役員に笑顔で言われた言葉。その方は、外銀のIBD2つとPEファンドを経由してきた方だったこともあり、受け止める側としては緊張感を持たざるを得なかったのは今だからのお話。

その後、一ヶ月程、26-28時くらいまで仕事をしていた日も珍しくなかったし、その後も基本終電な毎日でしたか。その部署ではそこそこの立ち上がりだったと思いますが、半年後くらいに異動があったとき、異動後2週間程度で立ち上がって、副社長直下のプロジェクトで、副社長、管理部門執行役員、全ての事業部の企画・管理部長、企画・管理マネジャーを中心とした50+のプロジェクト(最終的に100+)のリードをすぐさま担当していたのは、入社直後の彼の言葉によるマインドセットであり、期限設定の概念が寄与したと考えています。

あなたは、「いつ」一人前になるのか?この質問に対する答えを持つ、というか、決める、ことがとても大事だと思うのです。自分で自分が活躍するまでの期限を設ける、ということ。そのタイムプレッシャーは、一日一日の一つひとつの仕事への向き合い方、集中の度合いを大きく変えると思います。

一ヶ月であるかどうかは、条件によって異なって、転職でも異業種同業種、異動でも部署内部署外で、業界知識、ビジネスモデル、ネットワーク、必要スキル、等の活躍の基本要素の有る無しが異なるので、変わってきます。僕の見立てだと、こんな感じ。

  • 異業種転職:1ヶ月
  • 同業種転職:2週間
  • 部署間異動:2週間
  • 部署内異動:1日〜1週間

人によって、条件によって、設定する期限は異なるとは思いますが、転職や異動のBefore/Afterの差分を明確に理解した上で、ストレッチな期限を設定することが、好影響を及ぼすと考えています。 

2. 「全体構造」をおさえる:新しい何かをするときの「道標」を持っているか?

たけしさん、魚を説明してみてくれますか?

とある外資系企業に入った最初のプロジェクトのPMとのマンツーマンのインターナルミーティングをしている最中に言われた言葉。頭の中が「?」な中、「背びれと尾びれがありまして、・・・」と色々と答えた記憶があるけど、何を目的として、そんな質問をしているのか、理解しかねた。というのが、10年近く前の出来事だ。

結局、僕が話していたことは、何を話していたかが理解されなかったということ。当該プロジェクトのワークの全体構造を理解していないままの発言は、アウトプットの中のどこに位置づけられる発言なのかが不明。僕が発言していたことが、アウトプットの全体構造の中のどこにもおさまることができず、クライアントに満足して頂くための活動として全く価値がない、ということだったのだけど、そのPMは、魚という身近な題材で、構造化の概観に気づいて欲しかった。というのが今推察するところ。ロジック至上主義で血も涙も無いPMだったのですよね。。。

そんな経験があったからかわからないが、いつからか、物事に全体構造がないと気持ちが悪い人になってしまった。全体構造がわからないと不安で仕方ない。検討を予定していることが十分なのか不十分なのか。どこからか新しい大事な何かが出てくるのではないか。そうした時に、期限内に終わるのか終わらないのか。ひょっとしたら期限内に終わらせるために、品質に影響を及ぼしてしまうのではないか、所望のアウトプットを得ることができないのではないか。

ビジネス本におけるMECEという概念。僕は、MECEて言葉を使うことは好きではないので、構造、という言葉を多用するのだけど、どちらでもいい。どちらにせよ、全体構造をおさえないことには、始まらないと考えている。新しい職場にきたときに、新しい何かをするときに、とても大事なことだと思う。

構造とは、構成要素と要素間の関係が存在しているので、何をしないといけないか、の対象は網羅されていて、さらに、関係性が存在していることで、優先順位をつけることも可能、ということで、何か新しいことをするときの道標としての意味合いがあるわけだ。

初日に、事業のPLを教えて下さい

今の会社の入社前面談で、僕が上長になる人にお願いしたコト。その上長の方は、ちゃんと憶えてて下さって、予算を担当されている方とのミーティングを2時間ほどセット頂いて、僕は、初日に当該事業のPLを理解することができた。

なぜ、僕は、事業のPLを教えて下さい、とお願いしたのか?それは、事業経営の全体構造を理解するために必要な情報だと思ったから。PLは、事業戦略とそれを実現し得る組織構造を踏まえた事業経営の結果がまとまった情報だと考えていたからなわけです。

その会社に転職する直前、複数事業からなる一つの会社の事業管理の仕組みを毎日16時間くらい費やして考え議論しまくっていたせいか、PLの各数字の背景にある事業戦略や組織構造を思いめぐらすことに慣れていたというのもあるのだけど、大事なのは、全体構造を理解しようとしたことなのかな、と今も思います。

PLを基に2時間程話していくと、事業の外からではわからない全体構造がボンヤリとわかってくる。でも、そのボンヤリとでもみえる全体構造が大事だと思う。それにより、事業経営における要素とその関係がボンヤリみえ、優先して考えるべき論点を浮き彫りにすることを意味している。そのミーティングの後に自分に入ってくる情報の整理や、自分から取りに行くべき情報の判断基準になるわけだと思うのですよね。

僕は、事業企画のポジションなので、事業経営の全体構造を理解することがまず大事だと思ったのですが、勿論、ポジションによって理解すべき全体構造は異なってきます。例えば、営業だったら、そのグループの対象となるマーケットの全体構造が大事になってくる、というように。でも、どんなポジションだったとしても、思考や行動の優先順位や整理の精度をあげるためにも、自分の担当の業務に関する全体構造をまず理解することが大事だと思うのです。

3. 「準備する」、そして「質問する」:いかに、「沢山の修羅場」を呼び込むか?

たけし、いいか、全ては、準備で9割は決まる

新卒で入ったグローバルな電機メーカーで、超怖い人、で社内で超有名だったマーケティングの部長が僕に言った言葉。その時は、あまり意識していなかったのだけど、いつからか忘れたある時から、僕は、準備、をする人になっていた。

例えば、とある新人向け勉強会で講師としてプレゼンをした機会のお話。PPTの資料を作成した後、その資料を基に最低でも10回は口に出して練習をした。最初は、ただ読むだけ。途中から、伝えることの重要度の意識をしながら、音量の強弱、センテンスのスピードを意識し、オーディエンスの受け取り方をイメージしながら、抑揚や間隔を意識しながら、最終的には、プレゼンの場所と人数までを意識して、実際に立って、目の動きや身体の動きも意識しながら練習して、本番に臨んだりした。

これは、23歳くらいのプレゼンのケース、という限定的な例をあげてみたのだけれども、異動や転職の時も、全く同じ意味で「準備」が大事だと思う。これは、仮説を沢山考えておくことを意味している。まず、仮説を沢山考えておく、持っておく、ということ。

でも、実は、この準備だけでは不十分だ。準備に加えて、質問する、ことが異動や転職後のキャッチアップカーブの角度を著しく向上させると考えている。自分の仮説を誰かに質問することで検証するわけだ。この仮説検証のループをどんどん回すことが大事、ということ。

先述した様に、今の会社に入社した初日に、当該事業のPLについて説明頂く機会を頂いた。でも、説明を一方的に聞いていたわけではない。僕は、入社する前から、当該事業に関する情報を公開情報から仕入れて、ビジネスモデルや組織構造を考えていた。紙を沢山使って、ああでもないこうでもない、きっとこんなビジネスモデルで、ここにこういった組織があって、これが強みで、こんな費目が売上比率が高くて、みたいな仮説、いや妄想かもしれない。でも、沢山考えていた。そして、沢山考えたことと、説明頂いたこととを突合させて答え合わせをすると共に、間違っていた場合は、色々と質問をしていったわけ。

ただ、説明を聞けば良いのでは?と考える人もいるかもしれないけど、僕はそのスタンスは絶対にとらない。自分で考え、質問することで、自分が考えたことと、事実や他者の意見とを繋げることで、理解が深まる、そして、自分の中だけで不確定な位置付けで持っていた仮説や想定等の何らかの情報に白黒がつくことで、その時点以降に思考する際の精度、生産性の向上に寄与でき、キャッチアップの早さに繋がると考えている。

そんなことを言っても、そんなに質問を浴びせることができるようなキャラではないから無理です。そんな風に思う人もいるかもしれない。その気持ちはわかる。僕も昔はそうだったから。へんてこな質問をしてしまうのではないかという自己防衛さ半端ない感じの人。でも、それも、とある経験から、それは変えないといけない、と痛烈に体感して、自分を変えてきた。

とあるグローバル企業のアジア拠点のシンガポールで、APAC統括会社CFOとAPACの事業管理の仕組みを再構築するというプロジェクトにアサインされたときのお話。僕は、それまで、管理会計の「か」の字も知らない人だった。「ハイフ」の正しい漢字なんて想像もつかなかった。そして、事業戦略には興味があったけど、事業管理には興味がなかった。管理会計の本を読んでも全然頭に入らなかった。

でも、コンサルティングワークで、バリューを出さないとヤバいわけです。これまた非情な方がシニアマネジャーで、日本に帰すぞ、とか何度か言われて、なんとかバリューをだして、クライアントにも満足して頂いて、最後にはシニアマネジャーにも少し褒められて、プロジェクトをやりきったわけですが、そこにアサインされたもう一人のメンバーと自分の違いが激しすぎて、そこから、とても学んだというお話。

そのメンバーの彼も、管理会計のプロジェクトの経験はゼロだった。そう、プロジェクトを開始した時には、僕と同じ状況。でも、プロジェクトが開始して、2週間から1ヶ月経過した時には、CFOの良い相談相手みたいな感じになっていた。僕は、日本に帰すぞ、とか言われていたのに。

なぜ、数週間で、そんなに差が生まれたのか?それが、質問する、という行動があったか・なかったか、ということ。彼は、まさに先の様な準備と質問、仮説と検証を、現地法人の経理財務担当の人としまくっていた。その様子について、彼に聞いてみると、口に出して質問する話してみることで、理解がどんどん深まっていく、という。先に書いた通りのお話。

わかっていないので、質問できない、話せない。それは逆のお話。わかっていないから、自分なりに考えて、質問する、話をする。そうして、仮説検証を高速で回していく。それが、キャッチアップカーブの角度をぐっとあげる。これをやるかやらないかの違いは、ホント半端ないインパクト。一度、この行動様式を実践してみると、やらずにはいられなくなってしまう。

ちなみに、質問する、って、小さな修羅場なのかな、とも考えています。別に質問をしなくても、その場は、時間は過ぎていくし、その相手は質問して欲しいと思っていないかもしれないし、首尾よくその場を終わらせたいと思うかもしれないし、難しい質問がきて答えられなかったら嫌だし、とかとも思ってるかもしれない。

一方、こちらも、こちらの質問の筋が悪かったら、相手はこちらの能力を低く見立てる可能性もあるわけです。実際、小一時間話せば、その人が論理的に考えられる人なのか、議論を重ねることができる人なのか、相手に敬意を払える人なのか、などなど、ポジションという曖昧な情報以外の相手の本当の実力や人となりの大体がわかるからね。

で、そんな相手の時間を頂いて、質問をする、しまくる、ということ。それは、一つの修羅場だと思うのですよね。真剣勝負。だからこそ、その緊張状態をも踏まえながら、しっかり準備して、仮説を沢山持っていて、質問をしまくる。その一連の行動こそが、キャッチアップカーブの角度を高めると思うのです。 

4. 「毎日」自省し、改善する:あなたのPDCAの「頻度」は、どの程度か?

予習も復習もしない、おまけに実習もしないし、気分屋。多分、大学の1年生くらいまでこんな感じ。モラトリアムといったらカッコ良いけど、なんというか、努力とか継続とかそういうのとはとても縁遠い人。すこしずつまともになっていったけど、復習とかは、社会人になってもする人ではなかった。

そんな僕が、「毎日」自省、をするようになったのが、コンサルティングの仕事をしていた時。コンサルティングって、考えることを考えることが仕事なわけだけど、上手に考える、って、なかなかうまくできなかった。今でもまだまだそうだけど。

で、できるだけ上手く考えるようになるために、毎日、自分で自分を評価し、自分の課題を見つけ、改善策を考える、っていう行動に着地したわけです。BCGの御立さんの本に倣って、エクセルで、毎日、改善行動を定量的に評価したりしてね。

成長すること、ここでは、異動や転職した後のコンテクストで、早くキャッチアップすること、それを加速するためには、PDCAを高速で回す必要があると考えています。昔は会議毎にPDCAをしたりしてたけど、今は、一日一回PDCAを回すことにしている。

帰りの電車で、メモ帳を引っ張り出して、一日の出来事を朝からトレースする。うまく出来なかったことは何か、もっとうまく出来るべきだったことは何か、逆に、実は今まで出来なかったけど今日思いのほかに上手く出来たことは何か、明日は何を改善するか、それはどんな行動か。それを明文化して、目に見える様にする。そして、次の日の行きの電車で、メモ帳を再度引っ張り出し、昨日書いた文章のうち、本当に大事だと思うことには線を引き、必ず行動に結びつけるようにするという毎日。

たけし、俺たちは「毎日」進化しないといけない

これは、新卒の会社の時の偉大な上司の言葉。僕の課長だった後、イラン、インドネシアの現地法人の社長をして、それぞれ4年で5倍の売上に成長させ、今は、中東とアフリカ地域のヘッドをされている。彼が、毎日自省をしていたかは確かめられないが、毎日超本気だった。今、僕は彼ほどに本気になれているのか?ともたまに考えたりする。

半年とかの一定期間で、上司と振り返りをする人は多いのかもしれない。でも、それで十分ですか?PDCAの頻度の少なさによる改善機会の少なさだけでなく、その上司があなたのことをどれだけ本気で見てくれて、どこまで本気で具体的な改善提案をしてくれますか?それは正しいですか?あなたは、上司を選択することはできないし、良い上司に運良くあたることを待つことも、上司をあてにしても仕方ないと思う。

自分の成長や、自分のキャッチアップカーブは、自分でなんとかする。そのために、自分で自分のPDCAを毎日回して、毎日改善する。異動や転職直後なんて、毎日改善しまくれるわけです。

5. 「期待」に応え、超え続ける:その部署の誰かの期待に敏感になり、その期待を超えるためにコミットできているか?

異動や転職した後に特に大事なことが、こちら。自分のことを誰も知らない誰かと仕事をすることになるのが転職だし、少し知っているかもしれない誰かと仕事をすることになるのが異動。そんな誰かと一緒に何かのサービスなのか仕組みなのかを創っていくのが仕事。そこで、とても敏感になった方が良いと思うのが、仕事には誰かの何かの期待が存在している、ということ。

何かを創るためには、一緒に働く人との間に信頼が必要。しかし、信頼がないのが、転職や異動の直後なので、それを獲得しないといけない。そのためには、相手の期待に敏感になり、期待を自ら特定し、その期待を超える、ということが大事で、誰かとの一つ一つのやり取りを丁寧に紐解き、対応し、それぞれの人の自分への信頼残高を上げていくことが大事。

色々あるし、最終的にはアウトプットの質と量が大事なのだけど、新しい職場に就いた直後であるが故に意識したいのが、スピードと丁寧さ。在る情報からベストは尽くすが、いきなり相手の所望の期待値にミートできるかどうかは、相手のことを知らないので、難しいところ。でも、スピードで勝負することで、例えば、同じ時間で三回提案できたりすると、期待値を擦り合せる機会が増え、期待に応え、超えられる可能性が高い。そして、その期間に相手のことも理解できていって、その後のやり取りにも寄与ができる。

一方、丁寧さも大事で、信頼残高がゼロから始まったとき、上からな態度や常識の無さは、まずマイナスに触れる。一つひとつの挨拶、一つひとつのメールの返信、当たり前の作業の一つひとつ。それを大事にする。丁寧で礼儀正しさを持ち合わせ、信頼残高を増やした上で、自分のキャラを出せば良いのでは、と考えている。

重ね重ねの話になるが、前提としてとても大事にしたいのは、誰かの期待値は見えない、ということ。人間関係も出来ていない中で、自分に対して、口でわかりやすく期待を教えてはくれない。だから、相手を観察し、他の情報も併せ持ちながら、相手の期待値を見立てることが大事だと思う。

(おまけ)大事にしたいコトと、イチロー

以上が異動や転職の際に大事にしたいコトなのだけど、ここで、一見、全然関係ないイチローのお話。

実は、昔はイチローがそこまで好きではなかった。なんか理屈っぽいな、とか思ったり。でも、いつの間にか、僕が大事にしているコトは、イチローの名言に通じたりしている。そんな名言を紹介したい。

準備というのは、言い訳の材料となり得るものを排除していく、そのために考え得るすべてのことをこなしていく。

これが一番好きな言葉。3. と関係。

僕は一試合一試合振り返っています。まとめて振り返ることはしません

この言葉は少し前に知りました。4. と関係。というか、そのままですね。

ちいさいことをかさねることが、とんでもないところに行くただひとつの道

これも4. と関係。積み重ねるということがとても大事。

びっくりするような好プレイが、勝ちに結びつくことは少ないです。確実にこなさないといけないプレイを確実にこなせるチームは強いと思います。

これは、5. の信頼残高と関係しているのですが、違う捉え方でもあったりします。僕は、昔から誰かと違う何か、新しい何かが好きだし、追い求めていたりするのですが、それだけではダメなのですよね、と最近とても思っています。

自分の仕事自体もそうだし、事業経営でもそうだな、と。びっくりするような好プレイは、確度の低い新規事業や高ボラティリティ事業だったりすると思いますが、それらの事業だけでは経営は立ち行きません。だから、強い事業や強い経営をするためには、確実な事業や確実な業務、当たり前のことを当たり前にできる確実さというのが大事だだよね、と。でも、そこで思考を停止させないで、高次元にどちらも両立できる様な事業経営や会社経営があるよね、と勝手に色々考えたりもするわけですが。

ということで、イチローにまつわるおまけでした。

おわりに

さて、長くなりました。5つと書いておきながら、どれも長いよって?抽象と具体を織り交ぜて書いてみました、と言いたいところですが、一気に書いたので、バランスはわかりませんね。わかりやすいのかわかりにくいのか。

で、いま、読み返してみて思うのですが、20代って、かなり仕事ができていませんでした、僕。今超偉そうなことばっかり言ってるし、こう読んでみると超偉そうなことを書いているのかもしれませんけど。

そして、そこで思うのは、人間て成長するよ、と。できなかったことが、できるようになるよ、と。もし、20代で(30代でも40代でもいいけど)、これを読んでいる人で、自分のこと、全然イケてないな、とか思ってる人がいるのかもしれませんけど、頑張れば、できなかったことが、できるようになります。誰もが、頑張れば、できなかったことが、できるようになります。

賢明な方は気づいていると思いますが、ここに書いたことは、異動や転職後に大事にしたいコトなのですが、それだけでなく、成長するために大事なコトでもあるのです。もしよかったら、一つ二つ実践してみてくれれば、少しづつ変わっていくのではないかと思います。お役に立てたら、とてもうれしいですね。