五嶋みどりとピクサーにみる、感動的な作品の共通性
欲をなくし、素直でいる
少し前のプロフェッショナル 仕事の流儀に出ていた、五嶋みどりが良かった。
- 人生経験のすべては音に出る
- 音というものはとても素直に弾いている人の心境や経験が反映されると思うんですけど、音そのもの自体が、何か自分自身だと私は感じます
- だから私は素直に演奏していきたい
- 素直であるために、欲というものをなるべく見つめ直して、できる限り離していきたいと思います
一流になる人は、現実の捉え方が一流なのだな、と思わされた。上記のメッセージを聞いて、とてもはっとしたわけです。で、これって、音楽における音、だけではなくて、言葉、というのも同じことなのではないか、と思いました。
僕たちは、一日に沢山の言葉を発しているのだけど、その言葉の一つ一つは、すべて人生経験から生まれ、その時々の心境が大きく左右しており、それは自分自身なのだ、と。自分の言葉を誰かに伝え、何かを感じてもらう、そして、動いてもらう、というときに、素直に言葉を紡ぐ、ということはとても重要だと思うわけですね。
勿論色々と考えて、言葉を紡ぐわけです。色々な状況下で、論理的、政治的に考え、時に、感情的に、言葉を発していく。でも、誰かを、自分の欲、というのを取り除くということが大事だと思うのですよね。特に、チームで何かを創る、といった時には。
ピクサー作品のクオリティの根幹であるブレイントラスト
そんな話を書いていたら、ピクサーのブレイントラストの話につながりました。
- ブレイントラストとは、卓越した作品づくりに向けて、妥協をいっさい排除するための仕組み
- スタッフが忌憚なく話し合いをするための要となる制度で、およそ数ヶ月ごとに集まり、制作中の作品を評価する
- その仕組みはいたってシンプルだ
- 賢く熟慮あふれるスタッフを一同に集め、問題の発見と解決という課題を与え、率直に話し合う様促す
トイストーリー2のコンテクストではこんな風にも書かれている
- メンバー全員が人知れぬ個人的な意図ではなく、純粋に目の前の作品に集中していた
- 言い争いはしょっちゅうで、ときに白熱もしたが、得点を稼いだりといった、職場にありがちな水面下のやりとりには興味がなかった
- メンバーは互いを同等の仲間だと見なしていた
もう少し引用しておくと。他のブレイントラストのコンテクストで。
- 熟練の優秀なメンバーが部屋を埋め尽くしている。上映された映画について議論するために
- この状況で、発言に慎重になる理由はいくらでもあるだろう
- 礼を失したくない、相手の意見を尊重し、できれば従いたい、恥をかきたくない、知ったような口をききたくない
- 自分が発言するときには、どんなに自信のある人でも、一度チェックするだろう。これは良いアイデアだろうか、それともくだらないアイデアだろうか
- この段階では、率直さなどそっちのけで、ばかだと思われないためにどうするかしか考えていない
恐らく、通常の会議では、このようなスタンスで望む人が多いのではないだろうか。
でも、誰かに伝えたい、そして、何かの変化を起こしたい、と考えたときに、その伝えることの歩留りを、いかに、高めるか?を考えたときに、先の通り、率直であること、ということこそが、とても重要だな、と思ったわけです。
欲をなくして、素直になる方法
では、どうしたら、欲をなくして、素直でいることができるか?
一つ考えたのは、夢中になるか、忙しい状態にする、ことかな、と。結局、何かの無駄な情報から、欲が生まれるのかな、と思うので、そんな無駄な情報が入らないくらいに、目の前の何かに没頭すること夢中になること、もしくは外からのプレッシャーを引き上げて他のことが見えない状態にすることが大事なのかな、と。
一方で、佐藤可士和さんは、会議というコンテクストでこんな風に書いていたりします。
ものを創る仕事は、思いをぶつけ、意見を正直に表明することに存在意義がある
スタンスにまで昇華しているのですよね。僕の勝手な推察では、元々はそんな風にできなかったのではないかと思っています。そういった中で、色々な工夫をして、スタンスとして、毎回パフォームできるような形まで昇華したのかな、と。
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ということで、素直に言葉や何かを発し、誰かとの化学反応を起こし、何かの価値を創り上げる。その道は奥が深い。常にセルフチェックして、改善していくべきことですね。