たけしの華麗なる消費生活

消費したモノ・コトについて、書いています。

心を動かすコミュニケーションの本質 (「広告コピーってこう書くんだ!読本」 谷山雅計)

 

多分、コピーライターになりたい、っていう気持ちが僕のどこかにある。数文字、数行で生活者の心を動かす仕事であり、マーケティングという機能の結晶化された仕事であるように思うからだ。

しかし、実は、仕事をしていて、同じ様な感覚を持つことがある。結局、「要は、XXXです」と言って、納得してもらって、相手に動いてもらう、ということをする時がそれだ。何かのテーマに対して、考えて、資料を作成してみて、そこで何を言いたいのか、をExecutive Summaryでまとめる時や、各チャートのヘッドラインを書く時といったビジネスのコアコミュニケーションが類似していると思うわけだ。制約する諸要素は多分に異なる訳だが。

脱線すると、プロジェクトのプロジェクト名を考えるときがちょこちょこある。プロジェクト名は、プロジェクトの内容を如実に表現して、そのプロジェクトに属す人や関係する人たちにそのプロジェクトの内容を明確に理解してもらうと同時に、そのプロジェクトへの共感を持ってもらったり、エンハンスする力も内含してある必要があるわけだが、色々な観点や要素から名称を考えて絞り出してみて、私の考案したプロジェクト名称が採用されたりもしていた。それって、更にコピーライターに近い仕事だな、って思う。

そんな風に仕事をしている時に、思う時もあるし、道を歩いていて目に入るコピーやCMの結晶化されたメッセージングを見て、色々考えることもありつつ、自分でもコピーを書きたいなー、って思ったりする。勿論自分で勝手に書いているわけだが、誰か、コピーを書いて欲しい人いません?Twitter経由のメールでご連絡でも頂けたら。お気軽にご連絡頂けたらと思います。

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と、そんな中、読んでみたのが、博報堂出身で、コピーライターやクリエイティブディレクターをしている谷山 雅計氏の本書。代表的な作品はこちら。

  • 資生堂 TSUBAKI「日本の女性は、美しい」
  • 新潮文庫「Yonda!」
  • 東京ガス「ガス・パッ・チョ!」


本のコンセプトとしては、良いアイデアを出すためには、良いアイデアを発想するための体質を創る必要がある。発想法を知っても仕方ない。というもの。フレームワークやら何やらと色々とそこらへんに転がっているわけだが、毎日のアクションに結びつく習慣を身につけないと継続的に良いものを創出できないよ、という本である。

全体の総括としては、実に本質的な内容であった。物事を考えることについて、どのように考えるか、伝えるか、について本質的に具体的に考えられている。コピーに限らず、何か新しいことを考えること、つまり、企画する、ことに関する本質的な内容であった。そういう意味で、企画に携わる人は読んだ方が良いと思う。幾つかのポイントについて、取り上げてみたい。

「なんかいいね」禁止
何かのモノやコトに遭遇して、「いいね」と言うことがある。「カワイイね」とかも同様に。でも、何が良いのか?何がカワイイのか?を具体的に併せて発言する人は少ない。それは、感情の動きを示していて別に悪いことではないが、そのモノやコトの「受け手」でしかないのである。もし、「作り手」になりたいのだったら、なぜ良いのか、何が良いのか、を考えていかないと、何か良いモノ・コト、何かカワイイモノ・コトを自分たちで創造し、提供することはいつまで経っても出来ない。これは、コピーだけではない、企画の人全てに通じる話。

「たくさん」コピーを書く背景
コピーライターは、一晩で100本等のコピーを書いたりする。よくそれだけ書くなぁ、というのもあるけれども、ただ書くだけではダメである。それぞれのコピーに根拠が必要である。なぜ、そのコピーが存在するのか、という問いへの答えが。コピーの対象は、それが一つだけこの世にポコッとあるのではなく、色々な人やモノとの関係を色々と持っている。よって、これらの関係を明確化し、それらに対応付けたコピーができる、ということになる、フレームワーク的には。ただ、ここでは関係がどれだけ見えるか?対応付けたコピーを考えられるか?で論理では片付けられない観察力、洞察力、その前提となる感性やらのハードルがあるわけだが。

意味で書いて、生理でチェック
根拠を持って、先述の様に沢山書いていくのだが、最終的には、そう思っている人が本当にいるのか?という顧客目線での問いにしっかりと答えられないといけない。結局、生活者の心を動かす何かを創造しないと意味がないわけなので、一次的には論理で書いたとしても、最終的には生理で判断しないといけない。そうしないと人の心は動かせない。