たけしの華麗なる消費生活

消費したモノ・コトについて、書いています。

「開通90周年記念イベント 10月9日池上線フリー乗車デー」企画に関する考察

開通90周年記念イベント 池上線フリー乗車デー

東急電鉄は、池上線の開通90周年を記念するイベントで、10月9日に池上線フリー乗車デーを企画し、池上線に乗り放題で、沿線各駅でスタンプラリーやライブ等の様々なイベントを開催した。様々なニュース番組でも取り上げられており、例えば、戸越銀座では、戸越銀座コロッケがピックアップされて賑わい、戸越銀座駅は人がごった返しになって、ホームでは少し危ない状況だし、電車は満員電車になっていた。

実は奇遇なのですが、僕は、池上線の洗足池駅の目の前の洗足池に偶然朝からいっていて、アヒルのボートに乗ろうと思っていたのだけど、すげー人がごったかえしていて、10時半前に行ったら、かなり並んで待って手渡された整理券が13時のモノで、さすがに諦めて帰りました。みたいな体験もした出来事でした。

東急電鉄がこのイベントを開催した背景と、イベントの定量評価の難しさ

さて、なぜ、東急電鉄はこのようなイベントを開催したのか?なのですが、広報文にも書いてある通り、池上線沿線ならではの魅力を伝え、沿線地域の活性化を目指す、ということが大きな目的のようです。池上線は、東横線田園都市線ほどの人気はないことから、まずは認知度をあげるために、今回のイベントを開催したわけですが、このようなイベントの効果を定量的に評価するのは難しいから大変です。

電車の運行自体は、基本は人件費や燃料費等がコストとしてかかるわけですが、これらは固定費で変わらない。沿線各所でイベントを開催する際にかかる人件費や各イベントの変動費などの来場者が沿線各所の良さに気づいてもらうためのコストと、そもそも来場してもらうための集客コスト(チラシやらなにやら)がコストとしてかかります。推察ですが、イベント開催に伴う人件費コストと集客コストは東急電鉄持ちで、各所のイベントコスト(例えば、ボード代無料、等)は各業者持ち、なのではないか、と思いますが、それでも、数千万円くらいはかかったイベントなのではないか、と思います。

一方で、そのリターンとしての効果は、測り方が難しい。一次的には、乗車客数やイベントへの参加人数になり、それらの人数はある程度の粗さを残しながらも定量化が可能だと思います。そして、それらの結果、一人当たりの利用者獲得コストも算出することができて、他の集客施策との比較もある程度できると思います。洗足池だけでも、1000人くらいは乗降したのではないか、と考えたとき、1万人規模で人を動かすことができたのではないかと思うと、この一次指標のROIは良いかもしれません。(この施策では、元々池上線沿線に住んでいる人も利用してしまいカウントしてしまう点を考慮しないといけませんが。)

しかし、本来的には、池上線の魅力が伝わり、池上線への関心が高まることが目的なので、イベントで動員したお客さんについて、池上線への認知度がいかに上がったか、などの指標が測れないと大きな目的からはずれた施策になってしまいます。背景として、東急電鉄としての企画、というのがキーで、結局、東急としては、池上線沿線の魅力が伝わり、自分たちの住居選択の際の想起として、池上沿線が候補にあがることを考えているためです。東急電鉄のビジネスモデルとしては、東急の各線の運賃費による収益は勿論あるわけですが、その沿線の住居や東急ストア等の販売も大きな収益になっており、ライフスタイルの多くの側面に寄り添い収益化することをビジネスとしているわけで、その収益源となる儲かる線を増やしたい、というのが大きな狙いなわけなので。

そう考えたとき、今回の池上線フリー乗車デー、は一つの施策に過ぎない、と考えられます。さすがに、一回のイベントを利用しただけで、人々のライフスタイルの選択に影響を与えることは難しいわけで、多線的に施策を打つことで、住居選択における電車線の想起を上げ、選択確度をあげるように努めるのではないかなと思いますが、やはり、そのような様々な施策をすることを考えたとき、集客コストの考え方がなかなか難しいな、と思わされたわけでした。