たけしの華麗なる消費生活

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入門書のお手本 (「経営戦略論入門」波頭亮)

波頭亮氏の本を読むと、毎回腑に落ちる。本当にこの人は頭が良いのだな、と思うのですよね。複雑で入り組んだ難しい内容を実に簡潔にまとめ、その構造は洗練され、結晶化されていて、網羅的であるが、無駄が無く、具体性も織り込まれており、十分な奥行きがある。読み手の様々な理解度に対して、適切なアクセスがされていて、実にすんなりと腑に落ちて行く。毎回そんな感触を得るのが、波頭亮氏の本なのですよね。

 

特にこちらの本は、非常に素晴らしくて、頭を使うことが仕事であったり、うまく頭を使いたいと感じている人にはオススメの本ですね。とはいえ、小手先ではなく、本質的な内容が詰め込まれていて、ちょっとハードル高いかもな内容なので、色々な本をかじった後に、読んでみると良いかもしれませんが。

 

 

 

さて、この本は、題名の通り、「経営戦略論」の「入門」書になっています。「入門」書というものは、幅広く奥深い沢山の複雑な情報がある領域の入り口としての位置付けを謳っているわけですが、その要件として、当該の領域に関する全体像が俯瞰できて、その要諦を掴めること、と思っています。

 

そういう意味で、この本は、入門書のお手本の様な内容になっています。冒頭は、経営戦略論の変遷が書かれ、なぜ経営戦略が生まれ、どのような進化がなされてきたか、ということが、経営における歴史的な背景と、各経営戦略論の間の相関関係等が簡潔に記載されていて、その全体像を論理的に時系列的に理解することができる。

 

そして、時系列的な目線だけでなく、経営戦略論に関するパターンについても、方法論と強さの根拠の二軸で4パターンに分類されており、数多有る経営戦略の冠を持つ方法論やコンセプトについて、簡潔な整理がされているので、経営戦略論の全体像とその特徴を、体系的に理解することができる。

 

これらの内容が、本書を通じて、簡潔に記載されており、一文一文に無駄がなく、突っ込みどころもなく、文章が詰まっている。さらに、各章でポイントのようなパートがあるのだけど、その内容も更に結晶化された内容になっている。そんなわけなので、入門書としてのお手本でもありつつ、文章を書くこと、そして、まとめることのお手本でもあって、ダブルな良書だな、と思う訳ですね、これが。

 

と、ちょっと脱線したけど、そもそも経営戦略論とは、という全くの知識が無い人が、まず読んでみる本としても有りだと思うし、色々と経営戦略をかじってきた人が、構造的に整理し、その後、ミッシングパーツを認識して補充していく、といった整理の位置付けとして読んでみるのも有りだと思います。良い本です。