たけしの華麗なる消費生活

消費したモノ・コトについて、書いています。

考え抜かれた末の狂気 (「自分の中に毒を持て」岡本 太郎)

誰もが、毎日、何かに悩み、考え、行動している。私たちが目にしている誰かの行動の後ろには、その人の思考の葛藤があるわけだが、その葛藤を目にすることはほとんどなくて、仮に目にしたとしてもほんの一部でしかない。しかし、私たちは、目にみえる行動と、目に見えるほんの一部でしかない葛藤、そして、そこからできるわずかな想像から、その人のイメージを創り上げ、何かの判断をしている。

 

と、そこまで難しい話をしようとしているわけではなくて、岡本太郎の話。

等のメッセージで有名で、イカれた芸術家のおっさん、というイメージを持っていたくらいで、これまで引っかかる何かを持つことなく過ごしてきて、Wikipediaでチェックすらもしていなかった。しかし、とある起業家が、好きな本として、こちらを取り上げていて、とりあえず読んでみるか、という軽いテンションで読んでみたのだが、最初から最後まで心動かされる内容だった。

 

 

芸術家とは、感性が鋭くて、五感で捉えた何かを、直情的に何かの形として表現するモノ。そんな勝手なイメージがあった。岡本太郎の様な刺激的な言動をする人は、その傾向が強くて、知性とは異なる、確実に普通の人とは違う感性が存在しているのではないか、と思っていた。

 

しかし、そんなイメージを全く裏切る内容だった。18歳でフランスに渡り、ソルボンヌ大学の哲学科で、なぜ絵を描くか、の解を得るために、哲学、心理学、そして民俗学を学び、パリの思想家達と前衛的な運動をしてきた彼は、一つひとつのモノゴトに対して、考え抜いた末で、普通の人には狂気とも考えられる様な、非常識な選択をし続け、後世に残る芸術作品を創ってきたのだ。

 

そんな彼の文章には、心を動かす突き刺さる内容が多い。常識とは異なる逆張りの思考をただしているわけではなく、豊かな知性と感性から深堀り、導出された思考からくることがわかる。途中から付箋をつけるのをやめた。全ての人に読んでもらいたいレベル。