たけしの華麗なる消費生活

消費したモノ・コトについて、書いています。

信じる力 (バクマン。20)

"バクマン。"が終わった。先程最終巻である20巻を読み終わった。あぁ、終わってしまったという寂しさと、最高の終わり方からくる爽やかさが共存した読後感。そんな読後感のまま、最後のレビューを書いておきたい。

最近はそれほど漫画を読まなくなったのだが、"Death Note"のコンビが書いている本という噂を聞きつけて、一巻を読んでみて、その完成度の高さに手応えを感じて、毎巻楽しみに読んでいた。その19巻のうち、18巻で期待を超えていた。そんなに続けて期待を超える漫画なんてなかなかない!僕は毎回夢中で読んだ。一巻読むのに1時間とかかけて。

"バクマン。"の何が良かったのか?

一つ目は、構成力。ストーリーの全体構成を緻密に考え抜いた後に、各細部を創り込んでいることが見て取れる。本作で、漫画家である主人公達が夢を叶えた漫画と同じだ。コンセプトだけを重視してヒットして、惰性で生き長らえる漫画とは違う。主人公の成長に併せたアップダウンを適切に設定し、本当に最高潮で最後を迎えるという構成だ。

なぜ、このような構成を創れたのか?と考えたとき、”Death Note”での失敗があったからではないか、と推察する。"Death Note"はわかりやすいキラーコンセプトがあっただけでなく、緻密なストーリーの創り込みによって、期待をかなり超えた漫画だったわけだが、正直、後半は間延びした。もっと早く終わって良かった。恐らく筆者達もそれを実感していて、"バクマン。"では同じことを繰り返したくない、と思ったからなのではないだろうか。

それは、先にも書いた様に、本作で主人公が夢を叶えた漫画と同じだ。出版社側が連載をどれだけ長く続けさせようとしようと、アニメ放映には連載継続がベターだとしても、元から決めた構成を崩さない。つまり、筆者たちは、主人公達に自分たちを重ね合わせた。

 

二つ目は、表現力。表現力には二つある。一つは、画の表現力。人物の画は勿論、背景の画のクオリティも極めて高い。そして、人物描写の表現力。登場人物一人ひとりを丁寧に描いていく。立場の異なる一人ひとりに魂をこめて、各所で各人の目線で一つの物語を表現していく。物語は重層的でリアルで豊かなものになっていく。

また、これら二つの表現力において、細部が徹底的に描かれている、その妥協の無さに心が打たれる。考えて考えて考え込まれたその表現は、一つひとつの画とその一部、一人ひとりのセリフの各センテンスから、筆者らの妥協のない完璧を目指す息づかいが聞こえてくる。読み手である私は心を動かされる。

三つ目は、物語力。この漫画は、夢を叶える物語だ。夢は二つから成り立っている。一つは自分の仕事である漫画において、トップに立つこと。そして、もう一つは、好きな人と結婚することだ。二つの夢は密接な関係になっている。

夢を叶える道程には、挫折と成功の繰り返し、その中でライバルとの勝負や友情等が積み重なっていく。それは、決して平坦なものではなく、これでもかという試練に出くわしていく中で、主人公達が一歩一歩成長していく様があり、我々の感情は多分に移入されていく。そんな主人公達や他登場人物とのやり取りから創られる大小の物語は、先に記述した表現力も相まって、実に読み応えがあるものに仕上がっていく。



と、なんだかもっともらしい感想文を綴ってみたが、この漫画の良さの10%も表現できていないような気がする。ここまで読んでくれた方、ごめんなさい。

結局、僕は、この漫画の何に心を動かされたのか?

信じる力なのかな、と思う。自分の夢を信じる力。自分の能力の無限さを信じる力。友人を信じる力。パートナー(編集者)を信じる力。そして、好きな人を、好きな人が自分を想っていることを信じる力。そこに、圧倒的な純粋さを感じたし、他の何モノにも負けない圧倒的なブレない強さを感じた。現実を超えた、圧倒的な信じる力に心を動かされたのかもしれない。

ということで、一つの素晴らしい漫画が終わってしまった。この二人の著者の次回作に期待。きっと、"Death Note"、"バクマン。"を超える作品を創ってくるに違いない。この漫画の主人公たちのように。